「ありのままのわたしを生きる」ために  土肥いつきさん(セクシャルマイノリティ教職員ネットワーク副代表)

山口県同教の学習会が7月24日(日)、宇部市隣保館厚南会館において開催された。セクシャルマイノリティ教職員ネットワーク副代表の土肥いつきさん(京都府立高校教員)より、「『ありのままのわたしを生きる』ために」と題して、トランスジェンダーについて自身の経験、セクシャルマイノリティ(性的少数者)の現状と課題が提起された。ここでは、当日の講演の一部を報告する。      (文責・編集部)

 

「心の中に箱をつくって隠す」

私は、小学校の頃から女性に同一性を感じ始めていた。中学生になると「胸がほしい」「女装をしたい」と思うようなった。しかし、そんなことを、親や友達、身近なおとなには言えない。女性の姿にあこがれる思いを、心の中に箱をつくって隠していた。そうすることで、「しんどい」とは思わずに過ごせていたから。

 

 

しかし、高校の教員として、同和教育を実践する中で、在日や部落出身の生徒が、クラスの仲間や友達に、自分の立場を打ち明けられないで悩んでいる姿を目の当たりにしていく。「一緒に差別のことを考えてほ欲しい」「ありのままの自分を分かってもらいたい」という思いはあるが、打ち明けることが出来ない。

 

そんな生徒たちを前にして、最後まで言えなかった言葉「お前な~、何で言えへんねん!」。口元まで出かかった言葉が出せなかったのは、自分自身も心の小さな箱を開けれていなかったからだ。自分は、ありのままの自分に向き合う生き方ができているかと問い返す日々が続いた。

 

そんなとき、セクシャルマイノリティのことが書かれた本に出会った。その本にはこんな言葉あった。

「トランスジェンダー」(性別を超えて生きる)【肉体への違和感はあまりないが、社会的なあり方に違和感を持つ】
「そうか!私って、これだったんや!」と。

 

それまで、心の箱に刺激を与えないように、情報を求めないようにしていた。テレビで出てくる人たち見ても、それは遠くのブラウン管の中の人。自分の身近にはいない。「こんな変態は世界でたった一人だ」という気持ちになっていた。でも、トランスジェンダーという言葉を知り、同じような立場の人たちと、たくさん出会うなかで、自分自身と出会い直しをしていった。

 

「自然は多様性を好む。しかし、社会はそれを嫌う」

 

トランスジェンダーの数は、1000人に1人ぐらいいるとも言われている。同性愛者なども全人口の約5%いると言われている。 自分の周囲にも、必ずセクシャルマイノリティ(性的少数者)の人がいるはず。

 

しかし、差別や偏見が強いため、カミングアウトが困難。そのため、セクシャルマイノリティの存在が、社会の中で顕在化しにくい。 また、当事者に正しい情報が届きにくく、孤立や自己否定につながりやすい。さらに、家族に受け入れられることが極めて困難な状況がある。

自分の周りに性的少数者がいないとしたら、それは排除しているか、言えない空気をつくっているから。

最後に、ある言葉を紹介したい。「自然は多様性を好む。しかし、社会はそれを嫌う。」
性の多様性は自然なことだが、多様な存在を社会は嫌う。誰もが自分のことを語り合える社会をめざして、これからも活動していく。

 

【性のバリエーション(基礎知識)】

1,旧来の社会常識 

旧来の社会常識では、世の中には女と男の二つの性別しかないと考えられてきた。
誕生時に振り分けられた男女の性別を固定的にとらえている。そして、与えられた社会的性役割(ジェンダー)にしたがって生活する。その一環として、異性を愛し(性的指向)、結婚して子孫をつくる。

 

2,「性」の要素

人間の『性』(セクシュアリティ)を考える時、それぞれにバリエーションがあることをおさえておく必要がある。

①「身体の性」・・・性染色体・ホルモン、その他の要素によって決められる性。
 男女両方の特徴をもつ、あるいは男女どちらかに分化しない人のことをインターセックスという。2000人に1人いると言われる。

 

②「性自認」・・・「身体の性」とは無関係に、自分の性をどうとらえるかとういこと。

 

③「社会的性」・・・服装、しぐさ、役割などにあわらわれる社会的な性役割。
 

「性自認」「社会的性」など性別を越境して生きる人をトランスジェンダーという。自分の性別に違和感を持つ場合もあれば、与えられた性別に依拠せずに、自ら別の性を選択する場合もある。
 トランスジェンダーは、その違和感・こだわりのあり方で、大きく次のように分類されてきた。

 

④「性的指向」・・・「身体の性」「性自認」「社会的性」とは無関係に、性的欲望の対象がなんであるか。

 異性を好きになる人のことを「異性愛者」という。それに対して同性愛者、バイセクシャル、Aセクシャル(性的欲望を持たない人)などがある。

 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックスを総称として、「LGBTI」=「性的少数者(セクシャルマイノリティ)」という。

 

「性同意性障害」≠「トランスジェンダー」

「トランスジェンダー」という言葉は、社会的なあり方をさす言葉。それに対して、医療的側面からは、肉体的な性別と性自認の間の違和感のあり方が診断基準を満たす場合、「性同一性障害」という疾病名をつける。

 

2007年時点で、病院で受診し「性同一性障害」と認定されている人は7117人。2003年の3000人から比べても2倍。

 

2003年「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下「特例法」)が成立。

翌年、この「特例法」による性別変更が初めて認められた。

2010年現在で、2238人に対して性別変更の許可が出されている。

 

この法律は、画期的な意味を持っているが、課題も多く含んでいる。

この法律は、性的少数者の権利を認めるというものではなく、医療との関わりに限定された「性同一性障害者」を対象とし、「病者救済」という性格を持っている。

また、「結婚していないこと」「子がいないこと」などの条件があるなど、当事者からは多くの課題も指摘されている。