これからの部落解放運動【講演者 組坂繁之】

部落解放同盟中央執行委員長 組坂繁之【2008年2月 解放新聞 第22号より】

旗開きでは、組坂繁之・中央執行委員長が「これからの部落解放運動」と題した記念講演をおこないました。講演では一昨年の不祥事へのお詫びと組織再生に向けた決意、「私と解放運動」、人権侵害救済法の動向、人権のまちづくり運動の重要性などが語られました。ここでは、組坂委員長からは日頃聞けない「私と部落解放運動」についての一部を紹介します。

27歳から運動を

kouens.jpg私は27歳まで解放運動はしていなかった。それまでは、部落の人間がまじめに働き、まじめに生きていれば差別されない、「寝た子を起こすな」という考え方だった。どうしてこういう差別があるのかも分からない。悶々としていた日々を送っていた。
そんな時、職場の若い女性が4本指を突き出して「あそこはコレがいるから気をつけて」と、私にそう言った。それまでは、部落差別は年寄りが死んだらなくると思っていたが、そんな簡単なもんじゃないと痛感させられていった。ムラの青年が結婚差別を受けて相談にきた。うちのムラで大学を出たのはボクだけだったから相談にきたというが、「どうしてこういうことになったのか」と聞かれても、何も応えられなかった。そんな自分が情けなく、自分自身も勉強しなければと痛感していた。ちょうどその時期、学力保障としてムラの高校生たちに勉強を教えてくれる先生たちがいた。その先生たちと一緒に必死になって部落のことを勉強した。解放理論についての本などほとんど読みあさっていくうちに「なるほど、これは運動しないといけない」と思った。なかでも村越末男さんの『差別の論理と解放の思想』という本に一番感銘を受けた。

部落民のためだけの運動ではダメ

それまで私は「部落解放運動は、部落の子ども達の進路保障、生活を守るというように、部落大衆のために努力し、闘争するということは大事だし、当たり前だが、それだけで本当にいいのか、それだけではないんじゃないか」と思っていた。もっと普遍性があるものでなければと思っていた。その本には教科書無償闘争のことが書かれていて衝撃を受けた。最も教育から疎外されてきた部落の子どもたちにスポットをあてて「義務教育は無償とする」という憲法26条を保障するという闘い。同時に部落の人たちと同じように苦しんでいる部落外の子どもたちにもスポットをあてて、最終的にすべての子どもたちの幸せにつながった教科書無償闘争。私はこの時に「これだ」と思った。部落解放運動はこのような闘いをしていくべきだと目覚めた。「部落民のためだけ、部落の子どもたちだけが」という運動は普遍性を持ち得ないし、多くの人の共感を得ることができないと思っていたから、このような運動なら私は生涯をかけてこの運動をやっていこうと決意した。

原点は水平社宣言

zentais.jpg「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という水平社精神、人間解放運動。部落解放運動の原点は全国水平社宣言である。『橋のない川』を書いた住井すゑさんが「日本でただ一つの文化遺産を挙げよと言えば、私はなんのためらいもなく、全国水平社宣言をあげる」と言っていた。私は運動で行き詰まったり、悩んだときに必ず全国水平社宣言を読む。水平社宣言を忘れたような運動は、解放運動とは言えない。一連の不祥事は、まさに水平社宣言の趣旨をどこかに置き忘れて
いたからこそ、過ちをおかしたものだった。今こそ、水平社宣言の精神に立ち返り、これからの解放運動の再生に向けてがんばっていかなければいけない。